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眼前の男は160cm弱のおばちゃんを見下ろす。
まるでドライアイスの様に冷たい黒い瞳の持ち主は黒いスーツの内ポケットから一枚の写真を取り出し、質問に答えず口を開いた。
「このお方が此処に居るか?」
まるで感情の無い声はおばちゃんに戦慄を与えた。
その声と一枚の写真は鳥肌を立たせるには十分だった。
写真に写っていたのは紛れもなくデセス本人だったのだ。
第六感が告げる。
゛この者達は危険だ。デセスに会わせてはならない。゛と。
「……いえ、知りません」
目を見開き、震える手を必死に誤魔化すおばちゃんの努力は虚しくも崩れさる。
「嘘を付くな。探せ」
合図を聞いた残りの三人は一斉に土足で上がり込む。
皆、長身痩躯の男同様、黒いスーツに黒いネクタイをしている。
スキンヘッドに細いサングラスを掛けた太めの男。
ピアスを開け、金髪を逆立てた男。
黒い髪にパンチパーマをあてた男。
どう見てもヤクザみたいに男達がバタバタと音を立てると、リビングの三人の耳にも入ってきた。
同時におばちゃんの悲鳴も続く。
ただならぬ予感を感じたデセスとおっちゃんは急いで玄関へと駆け出した。
おっちゃんは驚きを、デセスは疑惑を心に宿しながら……。
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