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家出少年デセスの本当の名はディエス王国の王子、デセアド・ノア・ディエスだった。
敵対国を特有の大地の力で蹂躙(じゅうりん)し続け、今現在もアルヴィネス王国、ラザヴォード王国に高圧的な態度を示してきた凶悪な一族の王子。
これで全て三人の中で合点がいった。
デセスは……いや、デセアドは名を捨て、生まれ育った土地を捨て、゛デセス゛として第2の人生を歩いていたのだ。
友を、義父を、義母を、そして何より恋人であるフリアンを騙し続けたまま……。
だからこそ彼等がやって来たのだ。
恐らくディエス王国へ連れ戻す為に……。
立ち尽くすデセアドは彼らの視線でその事に気付いた。
状況は一変する。
畳の臭いが空気に付着したこの家はいつの間にかアウェーになっていたのだ。
――……ここまでか。何時かは言わなきゃと思ってたけど、もう無理だな。
諦めを悟ったデセアドは切ない目で三人をと順番に見つめる。
おばちゃんからおっちゃん、そして最後に最愛の人であるフリアンを……。
そして童顔の少年は薄い唇から綺麗な声を発する。
「今まで騙しててごめんなさい。ありがとう」
瞳には涙が溜まっていた。
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