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突然の別れ。
それはフリアン達を硬直させた。
「ホーン。その女性を放してくれ。僕は大人しく戻るから」
ホーンと呼ばれた長身痩躯の男はおばちゃんを乱暴に離す。
おばちゃんがおじちゃんやフリアンの元へ行くのを確認すると、デセアドは男の方へゆっくりと歩き出した。
「デセス」
映画のスローモーションのような中、フリアンは叫ぶがデセアドは振り返らない。
そのまま玄関を通ろうとした時、隣家にまで聞こえてきそうな大声が聞こえてきた。
「ちょっと待てやぁぁぁ」
あまりの声量に思わず振り返るデセアド。
涙の溜まった瞳には荒い息をするおっちゃんが映っていた。
「人の息子を誘拐するとは良い度胸じゃねぇか」
普段の陽気な声とは違う低く、唸るような声。
それに続き二人の女性の声も聞こえてきた。
「デセス」
「デセスちゃん」
迷惑をかけない為に素直に従った。
そうすればこの家に危害は及ばない。
瞬時にそう決心した心にいつの間にか迷いが生じる。
「おかしな事を言うな。このお方はデセアド・ノア・ディエスだ。汚らわしいアルヴィネス一族と一緒にするな」
答えたのは長身痩躯のホーンだった。
「違う。この子の名は゛デセス・アルヴィネス゛俺の大事な息子だぁぁ」
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