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――……息子?
――こんな僕を息子と呼んでくれるの?
――皆を騙したのに……。
堪えなくなったものは瞳から溢れ、頬を伝う。
「デセス。お前はどうしたいんだ?事情は知らねぇが帰りたく無い家に帰るのか?
それとも、ここに居たいのか?
本音を聞かせろぉ」
変わらずおっちゃんは獣の咆哮のような声でデセスに問い掛ける。
――……帰りたく無い。
――大空を自由に飛び渡るような日々。
――友達と遊ぶ楽しさ。
――魔法の面白さと難しさ。
――家族の暖かさ。
――そしてフリアン。
――初めて人に恋をした。
――自分でもビックリした。
――たった一人の存在がこんなにも自分の人生を左右するなんて……。
気付けば涙は川の様に流れ、唇は小刻みに震えていた。
――今回の一件で父様が地の果てまで連れ戻してくるつもりなのは十分分かった。
――だからこそ迷惑をかけてはいけないと思った。
――それでも、
――それでも僕にここに居ても良いと言うなら……。
震える声を必死に絞りだしデセアドは……いや、デセスは叫んだ。
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