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デセスはおっちゃんの元へ駆け出すと筋肉質の胸に飛び込む。
その光景を見たフリアンやおばちゃんの顔は綻んだ。
おっちゃん達は聞いた。
涙声で聞きずらい言葉だったけど、確かにデセスは「ここにいたい」と言ったのだ。
長袖で涙を拭うデセスはおっちゃんの胸から離れ、男達と対立する。
その瞳には覚悟を決めた力が宿っている。
「交渉は決裂か。しょうがない。他は殺しても連れて行くぞ」
リーダー格の男、ホーンの言葉に三人も臨戦体制に入る。
それを見たおっちゃんは右手をスキンヘッドの男にかざした。
「我が視界を遮る物全てを吹き飛ばせ゛氣弾゛」
黄色いエネルギー弾がスキンヘッドの男を襲う。
近距離、尚且つ初見の技に成すがままにやられたスキンヘッドは思いっきり玄関を突き破った。
どうやら鍵は壊れてしまったようだ。
先程迄の大声、そして今回の騒音に近隣に住む者達が「何事だ」という顔をしながら出てきた。
「ちっ、長引くと面倒だな」
ピアスを開けた男は状況の悪さを把握し、小さく舌打ちをした。
そして、スーツの内ポケットから漆黒の銃を取り出すとおっちゃんに発砲した。
「おっちゃん!!」
「お父さん!!」
デセスやフリアン、おばちゃんの声が狭い家に飛び交う。
スキンヘッドの男が避ける余裕すら無かった様に、おっちゃんも魔法で防御をする隙すら無かったのだ。
トマトの様に赤い血飛沫が舞い、木の床に飛び散った。
「おっちゃん。おっちゃん!!」
おっちゃんの肩に手をあて、デセスは揺さぶる。
しかし、反応が無い。
吹き出す鮮血の出所を見ると丁度心臓の辺りだった。
『お父さん!!』
まさかの急展開にフリアンとおばちゃん駆け寄ろうとした時……。
銃声が二回轟(とどろ)いた。
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