五茫星との闘い

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「エバー・……アル……ヴィネス? それが私の……名前」 聞いた事も無いかの様に少女はおうむ返しした。 その発言にエルモントは腕を組みながら右手を褐色の顎に添え、思案顔をすると口を開く。 「さっきから違和感を感じてましたが、記憶を無くしているようですね」 一息付いたエルモントは更に続ける。 「恐らく誰かがここを攻めた時の大量殺戮、又は親族虐殺が原因で精神的ショックを受けたのでしょう。崩壊したオルノス城の瓦礫の山から貴方に似た服を着てた方がいましたからね。理由は分かりませんが干からびていましたが……」 エバーと呼ばれた少女は深紅に染まったレース柄のドレスを来ており、その格好だけでも貴族、又は王族の令嬢であると容易に推測出来る。 「それが私が狙われる理由と何の関係があるんですか!?」 「最強の一族と謳われたアルヴィネス王国の魔方を手中に入れるためです」 丁寧な口調からは想像出来ない程声の温度は低い。 その声で尚も続けるエルモント。 「能力者一族の中でも異質な創造する一族。その力は時には火を操り、時には風を操る万物を操る力。その力が手に入るって時に求めねぇ奴なんかいるわけねぇだろ!!」 突然の変化、いや本心をさらけ出すエルモントにエバーの体表から冷や汗が溢れだし、幼いながらも綺麗に整った容姿は蒼白としている。 そんな二人の空間を破るように地面と平行する男は声を絞り出す。 「俺も仲間に入れてくんねぇかな」
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