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――アレゴレside
「結界……ですか。中々頑丈そうですね」
アレゴレは周囲を見渡しながら呟いた。
不透明な半球状のそれはアレゴレと眼前に立ち尽くす男の二人を包むには大きすぎる物体だ。
「ふふふ、これで貴方達も袋の鼠。」
アレゴレの前に立つ白衣を着た男は、ずれた眼鏡を中指で戻し、不敵に笑う。
鮮明になった視界には凝視するアレゴレの姿が……。
「眼鏡に……敬語……」
意味深な言葉に男は眉を寄せる。
「私とキャラが被ってますね」
「……」
暗殺機関、黒の派閥の第Ⅰ隊副隊長とは想像もつかない言葉だった。
温度の下がった空間の中、何事も無かったかのようにアレゴレは続ける。
「どちらがそのキャラに相応しいか、この漆黒丸で分からせてあげましょう」
アレゴレはローブを捲り、その名の通り真っ黒な丸い棒を取り出す。
漆黒丸は振ると三段ロッドの様に伸びた。
「どうやら私は外れクジを引いたみたいですね。
まぁいいでしょう。私の名はシオン。貴方は名乗らなくていいですから……」
盛大な溜め息と共に白衣の内ポケットから両腕でメスを取り出すシオン。
しかし、残念そうなシオンにアレゴレは訂正した。
「いいえ。貴方は当たりですよ」
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