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「魔神の腕?何ですかそれは?」
「安心して下さい。変に勿体振るつもりはございませんから」
突如、走り出すアレゴレの手にはしっかりと漆黒丸が握られている。
元々、大した距離じゃなかった故、二人の距離は瞬く間に無くなった。
「まったく、何を企んでいるんですか」
溜め息混じりに応戦するシオンは又も取っ組み合いになり、漆黒丸とメスが高い金属音を奏でる。
2つ目のメスが弾かれるのにそう時間は掛からなかった。
「これで終わりです」
丸腰になったシオンは足掻くようにアレゴレの腕を掴み、漆黒丸からの打撃を防ぐ。
「私は負けられないのです!!」
先程から冷静沈着だった男の眼鏡からは血走った目が窺える。
荒い口調はシオンの想いを伝えるには十分だった。
「貴方の戦う理由なんてどうでもいいのです。貴方達は私欲の為に世間に悪影響を及ぼしている。
そして、黒の派閥からの刺客を葬った。組織という名の私の家族を奪った。それは何よりも許せない事。」
ギロリと睨む目には、溢れ落ちそうな液体が溜まっている。
「さようなら」
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