雨中のカタストロフィ―

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重厚な雲が太陽を覆い隠しているある日。 西の大陸、ウェスト大陸のとある孤児院に叫び声が一つ。 「食らえ!!クルス」 叫び声と共に勢い良く右足の蹴りを繰り出す少年の前には、ツンツンとした金色の髪をしているクルスと呼ばれた男がいた。 「悪魔化・第一形態・盾」 クルスは意味深な独り言を呟くと、質素な白いTシャツから露になっている左腕が黒く変色し、歪な菱形の盾となりクルスを守る。 硬質化した左腕の盾にまともに脛(すね)を当てた少年は、「痛ってぇ」と叫びながら必死に擦り片足でジャンプをしている。 相当痛かったのだろう。 「悪魔化・第一形態・爪」 完全に無防備になった少年の前に、こちらも黒く変色した右腕が鈍く光っていた。 ダイヤモンドをも切れそうな程長く伸びた爪はまるで悪魔のそれだ。 「降参です!!」 少年は勢い良く土の上で土下座をすると、白く短い階段に座る周囲から笑い声が聞こえてきた。 皆、クルスや土下座少年の様に幼く、歳は大体14~15才だろう。 「あははは。ブレルト弱~~い」 「クルスに勝てるわけねぇじゃん。ブレルト~」 「そうだそうだ。クルスは天才なんだから無理だって」 ブレルトと呼ばれた坊主の男は野次に小さく舌打ちをしながら答えた。 「うるせぇお前ら!!俺だって何時かはクルスみたいに強くてカッコイイ男になってやらぁ!!」 確かにブレルトの言う通りクルスはとても端正な容貌だ。 キリッとした目鼻立ちに薄い唇、シャープな輪郭はまだ幼いながらもまるでモデルのようである。
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