魂を売った男

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断末魔すら聞こえてこない。 静寂を破るのは切断面から吹き出す噴水の様な鮮やかな血の音。 クルスは返り血を浴びないように、直ぐ様来た道を歩き始めた。 暫く歩くとクルスは無人の豪邸を背に外を歩いていた。 隣にはユウリの姿。 「飛行機を手配しました。暫くしたらくると思います」 「分かった」 それ以来二人は会話も無しに黙々と歩き、二人の黒い風貌は闇に溶け込んでいった。 今回の彼らの任務は天授十器の有無確認、そしてあった場合は追加で回収。 世の中には闇も必要。表裏一体だからこそ世界は回っている。 だからこそ必要以上に悪の存在を減らしてはいけない。 天授十器が無いと分かればそれで任務は完了。 しかし、彼は多くの命を奪った。 理由はただ一つ。 喧嘩を売ってきたから。 悪魔に魂を売った男に昔のような優しさは微塵も感じられない。 派閥に入って4年。 伝授十器の探索、危険人物の抹殺の任に付き、能力を使う度に心は悪魔に侵されつつあった。 こうして、クルスの復讐劇は静かに幕を開けた。
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