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ここはクルスの住む孤児院から少し離れた公園。
雲行きが怪しいとはいえ周りには誰もいなく、殺伐とした風景のそれはベンチに座るクルスに孤独感を与えていた。
肩で息をしながら藍色の瞳を瞑(つむ)る金髪の少年は、苦虫を噛み潰すような表情をしている。
すると、突然機械で編集された様な声が頭に直接響いてきた。
『モウ限界カ?』
――オイ。出てくんなよ。
『ナニ言ッテンダ?オ前ガ俺ノ力ヲ使ウ度、出ヤスクナルト何度モ言ッタゾ』
――だからここに来てんだろ!気持ちを沈める為に。大体何で俺の中にお前がいんだよ!!こんな能力者聞いたことないぞ。
『サァナ。ソレハ俺ニモ分カラネェ。デモ、段々オ前ノ抑制力ガ弱マッテ来テイルノハ分カル。長年一緒ニイルカラナ。何時カ人格ハ俺ノモノダ』
――黙れ。俺の意思は俺だけのものだ。お前になんて渡さねぇよ。消えろ!
『……チッ、ココマデカ。マァイイ、マタ直グニ出テキテヤルカラナ』
気付くと天を覆う灰色の気体が辺り一面に広がっており、それはポツポツと泣き始めていた。
無数に存在する雨は木や草を、砂を濡らしクルスのTシャツやジーパンにも後を残す。
――やべっ!急いで戻らなきゃ!!
もう一つの人格、悪魔の人格を押し退けたクルスは孤児院に向けて走り出した。
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