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寸前の所で蝙蝠(こうもり)のような、しかし大きさは何倍もある真っ黒な翼が背中の制服を破き、地面に埋まったクルスの体を上へと持ち上げる。
しかし、回避には間に合わず心臓の下にクリーンヒットし、鈍い音がするとクルスは吐血をしながらも翼で上昇する。
――やべぇ、肋(あばら)が何本かイっちまってる。
たった一発でなんつう馬鹿力だ。
「うわぁ、凄いねぇ。翼まで生えるんだぁ」
サントスは今度は地中に潜らず、地上から上空にいるクルスに呑気に喋りかけた。
その独特な喋り方のせいだろうか、余裕綽々な雰囲気を醸し出している。
「でもさぁ、そのまま上にいても君のまけだよぉ」
――こいつの言う通りだ。
どうする?
長期戦は無理だ。上空に飛んでも時間稼ぎがいいとこ。
こんな遠くから砲を使っても避けられるのがオチ。
第三形態を使うか?
……いや、ダメだ。
この程度の奴に第三形態を使ってちゃ、アイズには未来永劫勝てない。
あいつの強さはこんなもんじゃない。
クルスは瞳を閉じ深呼吸した。
かつての親友の姿が浮かぶ。
院長先生が殺された日の返り血を浴びたアイズの姿が……。
そして、ゆっくりと瞳を開くと、藍色の瞳は覚悟を決めた強い眼差しをしていた。
――やってやる。
この短期間の間に土竜の弱点を見付けてやる。
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