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「どうした?地上に降りたら僕に殺られるよ」
サントスはクルスの行動に意味が理解できない。
「飛んでても、現状維持でしかないだろ」
「まぁ、そうだね。君には口で言いくるめても意味無さそうだし、力で従わさせてもらうよ。
空に逃げて時間稼ぎするなんて、対抗手段が無い証拠だからね。」
そう言うとサントスはまた地上に潜った。
――とにかくあいつが何処にいるのか分からない以上、無闇に攻撃しても意味がない。
あいつの攻撃をかわしながら弱点を見付けるしかない。
クルスは集中しサントスの攻撃に備える。
またサントスがクルスの足を掴むために足元に姿を表すと、寸前のところでクルスは避ける。
サントスは足を掴むのを失敗すると分かるや否やまた地中へと姿を隠す。
時には足元へ、時には背後へ、時には眼前へと姿を表すサントスにクルスは防戦一方だった。
何度同じ事を繰り返しただろうか。気が付けば辺りの地面には無数の穴が出来ている。
――!……俺はバカだ。こんな簡単な事に気づかなかったとは。
遂に打開策を見つけたのか、基本無表情の表情に勝ち誇った笑みが見える。
――第一形態・剣、第二形態・翼。
クルスの右腕は少し歪(いびつ)な剣の刀身の様に変化し、背中には先程と同じ様に巨大な蝙蝠の翼が咲く。
途端、クルスの足元をサントスが掴まえ、クルスを引っ張ろうとするよりも早くクルスの翼が羽ばたく。
サントスは一緒に、空へと引っ張られ、遂に姿を現した。
「しまった。自分を餌にしやがったか」
クルスの狙いにサントスも漸く気付き、急いで手を離すが、時既に遅し。
――例え見えなくても、俺の足元を掴んだ瞬間には間違いなくそこにこいつはいる!
これで終わりだ。
空中にいるサントスには避ける術がなく、クルスの剣はサントスの左胸……つまり、心臓をいとも簡単に貫通した。
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