雨中のカタストロフィ―

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「アイズ!?アイズは今何処にいるんだ!!」 「院長室!お願い早くッ!!」 気が動転しあわてふためく少女達を余所に、クルスは風の様に走り出し、同室の二人もそれに続く。 突き当たりを曲がり階段をニ階分降りると、その目先には木造の扉が開いていた。 中には込み合った先生や生徒の悲鳴が響き渡っており、人混みを掻き分けると黒いローブを着た男が背を向けている。 彼の背後には血塗(まみ)れの薄い茶髪の院長先生が横たわっていた。 「院長先生!!」 大きな叫び声と共にクルス達が女史に駆け寄ると全身黒一色の男が振り返った。 綺麗にウェーブのかかった黒髪が開けられた窓から吹く風で靡き、返り血を浴びた健康的な肌が露になる。 「アイ……ズ……」 まるで永久のように感じる時間の中、2つの視線が交差する。 しかし、それも束の間。 アイズは変わらぬ憂いを帯びた瞳を親友から前にそらすと、ニ階の窓を飛び越えた。 「待てッ!!」 後に続き、窓を飛び越えたクルスの背中からは服を破き、黒い翼が生える。 蝙蝠(こうもり)のような、しかし大きさは何倍もあるそれは風を切る音と共に羽ばたき、土の上を走るアイズへと導いた。
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