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「待てって言ってんだろ!!」
「……」
必死の叫びも虚しく応答は無い。
するといつの間にか入り口の黒い柵を超えた辺りでアイズが独り言を呟いた。
「第七手・青龍」
色気のある低音の後、律動していた足を止めたアイズの足元に青い魔方陣が浮かぶ。
小石が混ざった地面に青色の丸の線の中に、同じ色の六茫星が入った魔方陣だ。
「……青龍か。このまま逃がすかよ」
決意を新たに、クルスの片腕は歪な大砲の上半身の様に変型した。
「悪魔化・第一形態・砲」
変型した片腕を足元が光っているアイズに向けると、黒いエネルギー弾が集まり放たれる。
「第二手・氣護壁(きごへき)」
それを見たアイズの周りに半透明の薄い膜が張られ、エネルギー弾を弾いた。
その間に魔方陣から5M近くの巨大な青い龍が唸り声をあげながら姿を現す。
「ちっ、間に合わなかったか」
小さく舌打ちをするクルスの瞳には顎から腹部を通り、そして尾まで一貫して白い部分がある典型的な龍が映っている。
それはかつて、何度も青龍を見たことがあるクルスでさえも、息を飲む程圧倒的な威圧感。
「だから待てって言ってんだろ!!シカトすんな!!」
「……」
大きく独特な肌触りがする背に乗るアイズは顔も合わせようとすらしない。
何度もエネルギー弾を放つが、吐かれた火が炎上網となり、いつの間にかアイズの姿は星の様に小さくなってしまった。
「ちくしょう。一体どうしちまったんだよ。……なぁ、アイズ。」
翼をしまい、地に降り立ったクルスにえもいわれぬ苛立ちや不安が支配し、そして豪雨がそれを助長させていた。
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