派閥からの脱退者

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「あれは……」 右を見るとユウリとルーナ、敵のポルト、そして見事な白い毛をした狼がいた。 3対1の状況でありながらも戦況は凡(およ)そ五分五分。それはポルトの実力の凄さを物語っている。 黒の派閥で言えば間違いなく隊長クラスだ。 ――何とか助けてやいたいけど、こっちはこっちで手一杯だ。 目線を戻すと元第Ⅰ隊副隊長アイズ・ラザヴォード。 4年前の15歳という若さと、副隊長という肩書きでありながら、実力は黒の派閥トップクラスと噂された神童。 「良くよそ見なんて出来ますね。風穴を空けられて辛い筈なのに……」 アイズの言う通り、ヴィラは意識も先程から朦朧(もうろう)としており、何時倒れてもおかしくない容体だった。 苦し紛れに氷と水で攻撃する隙のない連続攻撃だが、アイズには効かない。 時には最小限に避け、時には薄い膜が体を覆い、時には円形状の盾がアイズを守る。 最早八方塞がりな状況だ。 それでもヴィラは攻撃を止めなかった。 決して勝利を諦めた訳では無いが、ヴィラもバカでは無い 。 自分と相手の力量の差くらい分かっている。 ユウリの口寄せした天鳥がクルスを呼び、派閥に増援を要請。 その為の時間稼ぎ。 それが現段階で出来るヴィラの精一杯の手だった。
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