派閥からの脱退者

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~時を遡る事数分前~ 相変わらず雲1つ無いような晴天の中を、南に向かう飛行機が一機飛んでいた。 目的地は黒の派閥本部。 機内ではクルスが、柔らかい蛍光灯の光に照らされながら、ベッドで横になっている。 痛みが少し引いたのか、それは表情にも表れている。 ふかふかのベッドの中で、睡魔が彼を夢の中へ引きずり込んでいる時、突然、飛行機が揺れた。 「ちっ。何だよいきなり」 大きな揺れにより睡眠を妨げられたクルスは、苛立ちを顔に浮かべながらインターホンに視線を移す。 受話器を手に取るとプルルッ。と音がし、直ぐに機長が電話に出た。 「おい。何があった?」 「申し訳ありませんクルス隊長。後方から敵襲です。これからも多少揺れますので、しっかり何処かに捕まっていて下さい」 ――……敵襲? クルスは機長の忠告を無視し、個室内唯一の窓から外を覗くと、鳥が一羽飛んでいる。 それはクルスにも見覚えのある鳥だった。 ――何で天鳥がこんな所に? 細まったビー玉の様な青い瞳に、次は炎が映った。 背後から火を吹く何かが、天鳥に攻撃している。 ――なんだ?何が起きてる? 狭い窓からはまだ敵が認識出来ないが、少しづつ敵の姿が見え始めた。 綺麗に青と白で別れた顔の後は、これまた綺麗に青と白で別れた長い首、そして大きな青い羽と胴体。 目に写ったものにクルスは目を見開く。 ――青龍!? 何でアイツがこんな所に!? まさか……。 速くなる鼓動。 ドクンッドクン。と脈を打つ音がはっきりと聞こえてくるかのようにそれは大きい。 そして1つの結論に達する。 長年待ち望んだアイツの顔が浮かび上がる。 ――間違いない。 アイツが…アイズが呼んだんだ。
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