677人が本棚に入れています
本棚に追加
「大森!」
落合が見ると、大森は首から流れ出す血を手で押さえていた。
落合は大森の防弾チョッキの襟元を掴み、彼を引きずるように車内へ入れた。
「発車しろ!」
ドアが閉められると共に、装甲車は発進した。それでも尚銃撃を加える中国兵にはRWSが弾丸をお見舞いしていく。
赤十字の腕章をした衛生要員が大森に寄り、首筋に止血帯を当てた。しかし止血帯は直ぐに真っ赤に染まった。
「1尉、ここではこれ以上のことは出来ません…」
衛生要員がそう言った。
「分かった」
落合は白いタオルを取り出し、止血帯の上から押さえる。
「大森、大丈夫だ。もうすぐ着くからな」
「これ位…何ともないですよ…」
大森は弱々しく言った。白いタオルも見る見る朱に染まっていく。
「…これから…この国どうなるん…ですか…」
「そうだなぁ…」
落合が大森をそっと見ると既に事切れていた。
「クソ…」
落合は静かに呟いた。
最初のコメントを投稿しよう!