闇夜に紛れて

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二人の中国軍兵士はタバコを吹かしながら、キャンプの隅で歩哨に当たっていた。 「沖縄では我が軍が、日本人共を追い払ったらしいな。早くこの戦争を終わらせて家に帰りたい」 夜空を見上げながら少尉が言った。 「僕もです。貯めたお金で親孝行したいものです。少尉には娘さんがいらっしゃるんですよね?」 タバコをくわえ、上等兵はそう返した。 「ああ、もうすぐ5歳だ。俺はモンゴル戦線に行ってからまだ一度も家に帰ってないがな」 少尉は胸から写真を取り出した。その目は悲しそうだ。 少尉の目に草むらがガサガサと揺れるのが入った。 「誰だ!?」と少尉は言い、写真を直ぐにしまうと、自動小銃を構えた。 「待機しろ」 少尉は上等兵に指示を出すと、草むらに歩み寄った。
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