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初夏、早朝。
徐々に空が青くなり始め、雲の形がはっきりとしてくる時間帯。
場所はボロボロの地下駐車場。そこに一人の少年がいた。
そこでは今、戦闘が行われている。
比率は二九対一。少年は一人で日本刀片手に二九人の敵兵相手に戦っている。
少年の足元には無数の死体、と言うよりも肉片が転がっていた。
少年は敵の一人を切りつけ、踏み込んだ足が何かを踏み、それが血で滑って右膝が落ちる。
しかしそんな事をしていても、大半の敵兵は攻撃を受けた事にさえ気づいていない。
一瞬と置かず右の足を無理矢理前に出し、体勢を立て直す。そのとき不意に少年は今自分が踏んだ物の方へ、目線をやった。
人の死体だ。そう言っても首から下は無く、その顔さえもまるで獣にでも食いちぎられたかのように右側の三分の一が無くなっている。
それを見た少年の目から涙があふれ始め、まるで体を支えていた力さえなくしたように両膝を床につく。
外ではぽつぼつと雨が降り出していた。
それはあっというまに量を増して行き、その音を地下にまで響かせる。
そして数秒置いた後、目をつぶり少年は人とは思えないような叫び声をあげた。
それが切れると体はその形を保ったまま、意識を失いでもしたのかピクリとも動かなくなる。
そしてじりじりと距離を詰めていた敵兵の一人が痺れを切らし、叫び声をあげながら少年に切りかかる。
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