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飲みすぎていたのか。
もう辺りが薄暗い。
俺は重い頭を傾け時計を見るともう夕方の6時を指していた。
「はぁ~」
おおきく溜め息をついた俺は苛立たしく髪の毛をかき回す。
「……はぁ~」
仕方なく
彼女に電話をして正直に話すことにした。
指先が震える。
ボタンを押し終わると聞き慣れた音とともに
受話器から彼女を呼ぶ音が聞こえた。
そして3回ほどでそれが止まった。
「もしもし」
彼女の柔らかい声が聞こえた。俺はすかさず、
「もしもしあのさ今日の」
「――ねぇどこで待ち合わせなの?」
「えっ……」
そう
俺の言葉はものの3秒でかき消されてしまった。
勢いがなくなった俺はない頭で一生懸命言葉を考える。
「あっ!……その……さ、だから」
「ねぇ、今日は何処でディナーなの? 焦らさないで教えてよ」
彼女の声は、すでに陽気なリズムを刻んでいるかのように軽く、
俺との会話は全然噛み合っていなかった。
どうやら最初から俺の声は全然聞こえていなかったみたいだ。
心が痛んだ。
彼女が今日という特別な日をどれだけ楽しみにしているか分かってしまったから、
今から酷い事を言う自分を許せなかかった。
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