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西暦2031年、11月下旬。雪は今年も降りやむことはなく延々と敷き積もり、部屋の窓から見渡せる景色は一面銀世界へとなっていく。
いつも同じ時間に窓辺に置いてある椅子に座り、BGM代わりに大好きな歌手のCDを流す。そして目の前が銀世界へと変わっていく様子をただ眺める。
60分程度しかないCDの音が消える。それを待っていたかのように素早くコートを着て、まだ雪が降り続ける世界へと出ていく。
外に出てからも、ひたすら空を見上げ、舞い降りてくる結晶たちを眺める。
「大好きな曲も聞いたし、綺麗な景色も見れた。もう、思い残すこともないか。」
そう一言呟いて、この命に別れを告げる。
部屋に戻り扉の鍵を掛け、カーテンを閉める。鉛筆立てに筆記具と一緒に挿してあったカッターを右手にとり、ベッドに腰をおろす。
その凶器を持つ右手を左手首に当て、深く大きく息を吸い、止めたと同時に右手を手前に引いた。
閉めたカーテンの隙間から洩れている月明かりが、血液が溢れてくる手首を照らしていた。
その鮮やかすぎる鮮血に染まった自分の手首を見て、
「これで、死ねるよね。」と安心し、眠りにつく。
翌朝、いつも通り目が覚める。手首の激痛と、また命を絶てなかった悔しさを残して。
ふと、手首を見ると綺麗な1本線でできた傷が無数にあった。
私はいつまで同じことを続けていくのだろう。
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