一章

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 皆各々の家にて寝静まり、それが気にくわないかのように酔った大人たちが騒ぎ立てている深夜。何も変わらず、ただいつものように通り過ぎるだけの予定だったその夜。そこに、明らかに場違いな背格好をした僕が、ただ独り歩き続けていた。  僕は後悔していた。我がままな怒りを、罪のないクラスメートたちに感じた自分に、それすらにも怒りを感じていた。拳の血はすでに固まっていたが、痛みはいつまでもとれなかった。その痛みを自分への戒めだと思うと、僕は奈落のように深く、静かな罪悪感を感じた。  その日は野宿をすることにした。今から家へ帰っても母にこっぴどく叱られるだけだと考えたからだ。一瞬友達の家にと思ったが、よくよく考えてみると僕に友達はいなかった。少し悲しくなった。なぜ悲しくなるのか、その頃の僕には分からなかった。僕はできるだけ遠くにある公園へ行き、そこにあったベンチで眠ることにした。狭く感じたが、地面に寝そべるよりはましだと自分に言い訳をし、ごろんと横になった。六月の夜は意外にも肌寒く、制服を着たままの僕は体を丸くする他なかった。雨が降らないようにと神に祈り、誰もいない静寂の中で、僕は眠りについた。    *
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