一章

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「ハロー、もしもし?」  声。女性の声。それはとても綺麗で透き通るような、それでいて力強い、聞き覚えのない音だった。 「もしもし?あなた、今もうお昼よ?公園のベンチで起きるには少し遅めの時間帯って、それ分かってる?………あ、もしかしてお昼寝ってやつかしら。だとしたらごめんね」 「いや、大丈夫だよ、僕は。昨日はなかなか寝付けなくてね。それで。でももう昼か。どちらにしろ起きなきゃね」  いきなり声を出した僕に彼女は少し驚いたようだったが、それはさしても一瞬の事で、すぐに彼女は落ち着きを取り戻した。僕はベンチから起き上がり、彼女の気に障らないように注意しながら、少しだけ彼女を観察した。無表情だった。 「おはよう、ヤマカワくん。あ、こんにちは、かな?」と彼女は言った。 「ああ、こんにちは。ところで、失礼だとは分かっているんだけど、君は誰だっけ?ごめん。僕には君と知り合った記憶が全くないんだ」と僕は言った。 「ううん、いいのよ。初対面ではないけど、話したことは無いから。でも、私たち同じクラス同士なのよ?」と彼女は変わらず無表情のままそう言った。
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