頼み事

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待て。 この男が? 豊臣秀次が? "申し訳なさそうな顔"? 自慢にもならないし、しないが 俺はこの男が「微笑む」表情以外見た事がなかった。 それが"申し訳なさそうな顔"。 明らかに俺は動揺した。する以外の選択肢がない。そんな俺に構う事なく、奴は徐に口を開く。 「あのね、」 待て 「……。」 やっぱり早く言え 「………の事…」  「は?」 「才蔵…可児才蔵の事、宜しく頼んで良いかな」 可児才蔵 昔からふらふら主君を替えていて、元はこいつの家臣。何を思ったか 今は俺の家臣になっている奴の事だ。 「言われなくても宜しくしてる」 「そっか、ははは。うん あとさ」 まだ何かあるのか 「雨の日に傘を貸してあげられる様な人間になってね、って伝言もお願いします」 「? それはどういう意…」 数名の足音がして、俺はそちらを見た。全員 雨に打たれたみたいな面をして奴の前に並ぶ。 時間だ 「じゃあね、福島サン。よろしく」 立ち上がった奴の表情は、いつも通り気持ちの悪い微笑だった。
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