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「――ってな事があった!」
屋敷に戻った俺は、奴の切腹の一部始終を才蔵に言った。
その間、才蔵は一言も喋らないで 頬杖ついてかったるそうに聞いていた。腹がたつ。
「だけど よく分からん。何だ雨の日に傘、って…」
「ッはは、福島サンの頭じゃ難しいんじゃないっスかーウケる。」
よし、一発殴らせろ。
拳を握った瞬間、才蔵は立ち上がって俺に背を向ける形で外を見る。
「雨の日に傘を貸してやるヤツなんて、フツーいねぇって話っスすよ。…秀次サン」
才蔵の背中が、切腹の時の奴の背中と似ている気がした。
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