本番

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その片手には、包丁が握られていた。 背筋が凍る。 優は……なんで包丁を持っている? 「止めろ……止めろ優っ!!」 「ほんと……誠はこんなブスのどこを好きになったんだか……」 優が桜の頬を撫でる。 「急に私たちの間に入ってきたと思ったら……」 その手は、少しずつ下に動き…… 「誠を奪って、しかも『仲良くしてね?』だって……」 その手は首に行き…… 「ふざけんじゃ……無いわよ!!」 優は首を片手で思いっ切り締め出した。 「優、止めろぉ!! 桜、桜ぁ!!」 桜は今になって目を覚ましたらしく、だけど、急に首を絞められている状況に頭が追い付かず、ただ手をじたばたとさせている。 「桜ぁ!!逃げろ、桜!!」 「あんたに……誠の何がわかるって言うのよ!?」 優の包丁を持った手が上がって…… 途端、心臓が止まりそうな感覚になった。 「優、やめろぉぉぉぉぉぉ!!」 包丁を持った手は勢い良く頭に目掛けて落ちた。 ザシュという、音。 魚のように、ビクッと跳ねる桜の体。 俺はその桜を見て、何かが切れた。 「うぁぁぁぁぁああああああ!!」 「あっはっはっはっはっは!!」
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