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優の小さな声。
それは悲しみと憎しみに染まっている、初めて聞いた優の声。
その優が、ゆっくりと立ち上がる。
「もう誠は……私の誠じゃないの……?」
フラフラと……俺に近寄ってくる優。
「ねぇ誠……? 言ってよ……」
俺が縛られているベッドまで近付くと、優の表情が見えた。
背筋が凍る。
もうその顔は、俺の知ってる優じゃなかった。
その表情は、憎しみで醜く歪み、返り血で恐怖しか感じない。
いつもの見ているだけで微笑みを浮かべてしまうような、かわいい笑顔はどこにもなかった。
その表情を見て、俺は悟った。
「ねぇ、誠? 私が好きって言って? あんなブスじゃなくて、本当は初めからずっと私が好きだったんだよね?ネェ、ソウナンデショ?」
もう、この優は優じゃないんだ。
もう、桜も優もいない世界になんて、生きても仕方ない……
俺は覚悟を決めて、優を睨んで叫んだ。
「俺は、桜の事が好きだ!! 桜を愛してる!! 誰がお前みたいな奴を好きになるかってんだよ!!」
優の表情が、憎しみと悲しみに包まれる。
あぁ、桜。
今から、そっちに行くよ。
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