六分の一

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 三十の部活動を見学し終わった僕達は二岡先生の指示で一旦教室へ戻ることになった。 「では今から配る紙に、希望する部活名を書いて、提出するように」  そしてこんな一言により、僕と千穂ちゃんは紙と睨めっこすることになるのだった。  もうほとんどの生徒が書き終え、二岡先生に提出している。 「早く決めてよー」  千穂ちゃんがそういって僕を急かす。この娘、自分で考えもしないで……。 「あ、何私のこと睨んじゃってるのかな」 「別に」  そういって僕は千穂ちゃんから視線を外す。  全く、三十もある部活の中から一つをすぐに選べなんて。  皆よくやるよなあ。  ――ん? 三十?  まてよ、確かこの学校の部活の数は三十一あった筈だ。  でも見学した部活の数は三十、それは間違いない。ちゃんと二人で数えていたし。  今日は偶然休みだったとかか?  その一つだけ? ありえない。 「お二人さん、そろそろ決まりそうですか?」  僕がそんなことを考えていると、二岡先生が声をかけてきた。  気付くとクラスに残っている生徒は僕たち二人だけになっていた。  なるほど、悩んでいるようだったら手助けでもしようということか。  ……丁度いい。聞いてみよう。 「先生、この学校の部活の数って三十一ですよね? 何故、三十しか紹介しなかったんですか」  その言葉を聞いた二岡先生はどこか嬉しそうに微笑む。  そして。 「そうですね、その答えが知りたければ、その紙を持って保健室に行くといいですよ。 三十一番目の部活動見学が出来るはずです」  そう言い残し、教室から出て行った。  勿論保健室の場所なんて分からない。
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