六分の一

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 桜の花びらが空を舞う四月、僕は今日から高校生になった。  でもこれといって特にやりたい事はない。周りの人間が行くから、そんな感じだ。 「いい天気だよね、らいくん。こんな日に入学式が出来るなんて幸せだね」  そう僕に声をかけてきたのは隣を歩く黒髪美少女、新山千穂(にいやまちほ)ちゃんである。  彼女とは小さな頃――たしか二歳頃に彼女の家族が隣に引っ越してきたあたりからずっと幼馴染をしている。  小、中と同じなのはまだ良いけど、まさか高校まで同じになるとは思ってもいなかった。  とりあえずそうだねと相槌を打っておく。 「なんだよー、相変わらずやる気が無いなぁ、らいくんは。 もうちょっとで学校に着くんだし、少しはワクワクとかしようよ!」 「一応ワクワクはしてるよ」  分かりにくいだけで。  いや、本当はしてないけれど。 「あー、らいくんまた嘘吐いたね。 嘘は駄目なんだぜー、泥棒になっちゃうよ?」  僕は子供か!  大体嘘吐いたぐらいで泥棒になるなら、世の中泥棒だらけじゃないか。泥棒がたまたま嘘吐きだっただけだ。  それに、全く別のものを一緒にするのは良くない。 「嘘吐きに謝れ、泥棒にも謝れ」 「ごめんなさい」  そういうと立ち止まり、高校一年生にしてはやや小さめの体を前屈させる千穂ちゃん。  その素直さはこの先もずっと大切にしていてもらいたいものだ。 「それはそうと人が全然いないね」  そう千穂ちゃんが言うので僕は周りを見渡してみた。……なるほど、確かに人がいない。目に映るのは桜の花びらと僕達の右横を流れる川のみである。
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