六分の一

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「らいくんが女の子ばっかり見なければこんなことには……」  さっきから千穂ちゃんはこんなことばっかり言っている。  全く、自分の失敗を幼馴染のせいにするとは……。なんて酷い幼馴染だろう。  とか、思ってみる。思ってみるだけ、口にはしない。 「僕もちょっと恥ずかしかったから」 「ちょっとじゃん! あの中にはもしかしたら私と同じクラスになる人もいたかもしれないのにー」  ああ。だからそんなに恥ずかしがってるのか。 「まあ、あんまり恥ずかしがってると遅刻しちゃうぜ?」  初日に遅刻するなんて今の出来事より恥ずかしいんじゃないかな? 「む。それもそうだね。 じゃあとっとと行こうか、らいくん」  そう言うと千穂ちゃんは面を上げて、すたすたと歩き始めた。  なんていうか、そんな簡単に切り替えが出来る人間を僕は千穂ちゃんしか知らない。  まあそれは、千穂ちゃん以外の人とあまり関わる機会が無かっただけなのだけれど。  携帯電話で時間を確認すると、八時九分になっていた。  こんなことで十分近く時間を浪費したのか。と、自分でも驚いた。  体感時間的には二、三分だったんだけどなあ。  このペースで行くと本当に遅刻してしまうかもしれないので、ここから先は少し大人しくしていよう。  千穂ちゃんを追いかけながら、そう思った。
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