六分の一

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「らいくん、らいくん」  あ、千穂ちゃんが戻ってきた。心なしか見に行く前より笑顔になっている気がする。  そりゃそうか、千穂ちゃんは早く入学式が来ないかなって毎日呪いのように囁いてたし。 「何組だった?」 「えっとね、私が三組で、らいくんも三組! 七年か八年ぶりに同じクラスだよ」 「嘘だ!」 「嘘じゃないって、分かってるくせに!」  うん。確かに千穂ちゃんは嘘吐いてないんだけど……。  それでも、千穂ちゃんと同じクラスだなんてそう簡単に信じられない。 「一年間よろしくねっ、らいくん」 「あ、うん」  改めて言われると照れたりして。まあ嘘だけど。 「じゃあ一仕事終わったことだし、教室に行こうか」 「仕事したのは私だけだけどね」  確かに。  というか、この子ときたまグサッと来る台詞を吐くんだよな。  まあ、正直に生きてるだけなんだろうけど。  それにしても僕みたいな嘘吐きと、千穂ちゃんみたいな正直者の組み合わせって、稀だよなあとか思ってみたりして。  まあ実際のところは、ありがちな組み合わせなんだろうけれど。 「僕は依頼したじゃないか」 「うわー、それで一仕事に入っちゃうのかな。 じゃあ私は、依頼を受けたことと、見に行ったことと、報告したことの三仕事だね」  指折り三つ数える千穂ちゃん。 「……千穂ちゃんは全部あわせて一仕事だよ」 「ずるいんじゃないかな」  千穂ちゃんはそう言うと、校舎がある方へと一人で向かってしまった。  ま、笑ってたし、きっと靴箱かどこかで待ってるだろう。  そう踏んで僕も同じ方へと歩み始めた。  ただし今度は自分のペースで、だけど。
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