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父が他界しました。母の再婚相手だったので私にとっては義理の父にあたりますが。
享年八十二歳、大往生だったと思います。最後の言葉が、
『我が人生に一片の悔いな…し……』
と言いながら片手を、高々と上げてましたから大往生です。
資産家で、かなりの遺産があった父でしたが。遺言状をしっかり残してくれていたらしく、難しい話を大人同士でした後、ほとんどを母が総取りする形で決着しました。
その結果、親戚一同からハブられる形になりましたがね。
そんな中、母も母で呑気なもので。父が亡くなってから二ヶ月後に、
『ちょっと世界を巡って来るわ。達也と二人で何となるでしょ?』
とか言って、遺産の少しを持って旅行に行ってしまいました。アリエナイ……。
そんなこんなで四月。私は高校三年生になりまして、同じく高校一年生になりました義弟と同居しております。
「ほら達也、早くしなさい遅れるでしょ? 新入生が遅れるなんて、優等生の私の弟として許さないんだから!」
「ま、待ってよ姉ちゃぁん!」
そう言いながらチワワのような目を向けて来る。
ふ、可愛いやつめ。まぁ、海のように寛大な心を持つ私なら、少しくらいは待ってやっても……
『姉ちゃん、姉ちゃん!』
うるさいわね達也。今どのくらいなら待てるか、学校の経路から逆算中なんだから!
『起きろよ姉ちゃん! 朝ごはんが冷めるだろ! 人に作らせといて!?』
はいはい、ご飯作ってるから遅くなってるのね。大丈夫、十五分くらいなら余裕が……
『いい加減に起きろバカ姉ちゃん!!』
そうして暖かい外殻が取り払われ、四月の肌寒い空気に晒される私。
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