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「ナイスガッツ」
遠慮なく。鵺は、殴りかかるクラハシの拳を躱して、一撃を見舞う。
地面に激しく殴り倒され。クラハシはバウンドする。
「んお?」
だが。鵺は、拳の妙な手応えに違和感を抱く。
なんだ。今のは。
殴った感触がおかしかった。初めて。
初めてだ。今みたいな感触は。
「────ッお」
雑念に捕らわれていると。顔面に、蹴りを食らう。
宙を舞っていたクラハシが、身を捻り、回し蹴りを放ったのだ。
「っとと」
鵺は、たたらを踏む。踏ん張りを利かせる暇もなかった。
「やるな」
鵺が、嗤う。
強い。こんなにも。
これだけ、相手の備えを突破して。これだけ、殴って。
それでも。それでも、相手は新しい何かを見せてくる。
面白いと感じた。楽しい、とも。
目の前に、敵がいる。敵が立っている。
「そっちこそ」
全人類最強の拳を受けたというのに。今度は、そんな素振りさえ見せない。
クラハシは、熱を帯びた視線を鵺に向ける。しかし、殺意は冷徹で纏う。
まだ、やれる。まだ、戦える。
まだ、戦えるという事は。鵺を殺せるチャンスがまだあるという事だ。
続いている。負けてない。
まだ、折れてはいない。
その意思は。
その牙は。
クラハシの気炎は未だ衰えず。
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