第零章・斉天大聖

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 東国エルダジア。  人工島ルルイエは、悪魔が蔓延(はびこ)る、跋扈(ばっこ)した世界に於いて、全くといって良いほど悪魔が認知されていない。  つまりは、余所の国には出るらしいが、我が国で見たことなど一度もない‥……というわけだ。  しかし、だ。  どれだけ、島の住人が悪魔を認識していなくても、奴らは存在する。  “在る”のだ。  時刻は、丁度、日付が変わり午前零時を過ぎたところ。  寂れた住宅街を、自転車を駆る少年が疾走していた。こんな夜更けに、とんだ非行少年もいたものだ。  自転車の後輪には補助輪がしっかりと備え付けられており、よく見なくとも、その自転車は、主婦層に長年愛され続けてきたマシーンである。  つまりは、ママチャリ。  補助輪付きの。  もう一度、云おう。  とんだ非行少年もいたものだ……‥と。
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