序章:雪の中のお話

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2月2日。 場所は姫神市の北部に位置する、お世辞にも大きいとは言えない小さな住宅。 そこで、 「――ハァ、ハァ……ッ! ぅうウ!!」 「頑張れ! ……お前なら大丈夫、もう少しの辛抱だ! だから頑張れ!!」 「う、ん。――あッ……クッ――ッハァ……ハァ」 また、新たなる命が産まれようとしていた。 だがもちろん、ここは病院ではない。 本来なら、この妊婦も姫神病院という所で出産を行う予定だったのだが、それは二つの不幸により断念した。 一つ、妊婦の陣痛が予定日より10日ほど早かった事。 二つ、本日の天候が異様に悪かった事。 「…………………クソッ」 ふと、窓の方へ目をやってみる。とてもじゃないが車で出かけられそうな天候ではない。 風速は例年よりも8メートルほど速く、積雪量も普段の約2.3倍。 俗に言う『異常気象』ってやつだ。 それは交通機関が完全にマヒしていた事を意味していた。
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