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「………………すまない」
しかし、そんな二人の様子を外から眺めている男がもう一人。
全身隠す様に白いマントのような物を纏っているため、男の姿は保護色の原理でとても見えにくい。
そんな白い男の体はとても細く見えた。
それこそ、こんな大吹雪の中を立っているのも不思議なくらいに。
「もう時間がない……あと数分で、コイツが暴れ出す……。だから……」
ぽつり、と呟く白い男。
その右手には、まるで心臓のようにドクンドクンと鼓動している、銀色に光輝く丸い球体のようなものが握られていた。
「……あの子の為に、犠牲になってくれ」
白い男の声には、何か大切な者を失ったかのような哀しみが含まれていた。
体が、寒さとは別の理由で震えているのがわかる。
「…………琴実……他人を簡単に犠牲にしてしまう情けない父親で……スマン」
直後、白い男の手にあった球体はふわりとシャボン玉のように宙を舞い、ゆっくりと目的地へと動きだした。
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