序章:雪の中のお話

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そして球体は部屋の中へと入り、女の中へと入り、そのままこれから産まれて来るであろう赤ちゃんの中へと入っていった。 だがこの球体はどうやら一般の人間には見えないらしい。 男も女も、この銀色の球体に気づくことはなかった。 「……封印」 男が呟く。本当に小さく、風がなくても聞き取りにくいような声で。 胎内にいる赤ちゃんが薄く光った。もちろんそれに気づく者は誰もいない。 しばらくして、 「オギャアー! オギャアー!」 大きな泣き声を上げながら、何事もなかったかのように赤ちゃんは産まれた。 産まれたことに歓喜しているのか、それともただ怖いだけなのか。 その泣き声は強く家中に響き渡った。
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