第一章:異常の中の日常

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       1 暗闇のなか、少年は一人で立っていた。理由なんてわからない。 「ここは……どこだ?」 辺りを見ても何もない。どこを見ても、闇、闇、闇……。 「……………………………」 それにより、たった今わかった事が一つだけできた。 “ここには何も無い”というどうしようもない現実が。 「………誰か……誰かいねーのかよ」 強烈な孤独と不安が少年を襲う。 「………ん?」 すると、少年の背後から一点の光が射してきた。その色は鈍く光り輝く『銀色』。 振り向くと、太陽を直で見たような衝撃が目に走った。すかさず手を前にかざす。その時、 ヒタ……ヒタ……。 「――ッ!?」 裸足で何かが歩いて来る音が聞こえてきた。 「何だよ……アレ?」 よく見ると、巨大な人影のようなものが見える。 「……………………………」 何も言う事ができない。 求めていたはずの『誰か』なのに、感じるものは恐怖しか湧いてこない。 背筋が凍りついたかのようにゾッとする。
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