序章

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ある昼下がりの食堂 一人の大柄な男が居た 大声で喚き、傍らに二人の男を引き連れ 昼間から酒を飲んでいる様子だった 「あー、愉快じゃのー。俺らは浪士組じゃー!酒を持って来い!」 男の名を芹沢鴨と言った そしてその男を 見つめる客が居た その客は食堂に居るというのに 茶を一杯だけ。 時間をかけて飲んでいた 頭には祭の夜店で購入した狐の面を付け それを少しずらし、 口元だけが見える状態で 器用に茶を飲む 見えるのは口元だけだが 唇は薄く引き締まり 品の良さが醸し出されている 豊かな長い黒髪は 後ろ頭に緩く結い 菊の簪を付け 白地に濃紺であやめの描かれた着物を着た姿は 様々な男が 「色っぺぇ」 と言ってしまうだろう
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