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「あいつ、今………」
狐面の客はそのまま店を出ようとする
隣を通る時
涼やかな声音で
「俺はお前らが大嫌いや」
と呟いた
振り向けば面をきっちりつけており
顔を見ることは出来なかった
もやもやとした気持ちで
屯所に戻る
男の名は
井上源十郎と言った
浪士組最年長である
浪士組と言うのは
後に『新撰組』と呼ばれる様になる
井上はがっちりとした顎に
手を添えて考えて込んだ
狐面は俺たちに何か恨みを持っているのか
持つとしたらば、恐らく芹沢一派の
あの過度な振る舞いが原因になる
ふと顔を上げると
芹沢が赤鬼の顔で辺りを見回していた
あいつらをどうにかせんと。
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