序章

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かっ かっ かっ 小刻みに下駄を鳴らす 最近気に入っている女物の高下駄だ 紐をとり面を外す 風に豊かな黒髪がなびいた 色街を歩けば男共の視線が集まる 端正な顔立ちだった 町人屋敷の一角に 中でも大きい邸宅がある ふらりと中に入っていく のれんには『針』と書いてあった 「あら、ジョー。帰ったの?」 奥から小柄な女性が登場した ぽってりとした唇が印象に残る 「しの。」 そのまま引き寄せ唇を重ねる 「浪士組がまた阿呆な事しよるんや」 「ジョー。あんま街出歩くなって言われてるやろ。何で行くんよ?」 しのの問いかけには目もくれず 奥に入っていく 彼の名前は 林 丞乃介 針灸医である
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