02*

3/12
3363人が本棚に入れています
本棚に追加
/580ページ
佐藤くんに、島田くんに見せる笑顔を向けたことは無いし、ドキドキしたことも不安がることだって無い。 「ごめん、小野寺」 「…うん」 「やっぱり真央と話して分かったって…ゆうか」 「うん…」 うん。 それからずっと、耳に入ってくる言葉を聞き流すように。 ずっとずっと、頷いてばかりいた。 2人が頭を下げて教室から出て行った後、まだ残っていたクラスメイトが「また明日…ね?」と小さく別れの挨拶をしてくれた。 けど、その言葉にも頷くだけ。 静まり返る教室に誰も居なくなったことを悟ったワタシの目に、また涙が込み上げてくる。 「俺、何か言えばよかった?」 ビクッ 溢れそうになっていた涙は一瞬にして止まった。 そのせいで、視界がボヤけて見える。 …佐藤くん? そうだ…いたんだっけ。 「…別に。弁解するほうがおかしいよ」 「あっそ」 早く出てってくれればいいのに。 「帰らないの…」 床を見つめながら聞く。 「んー…帰らない」 本当、分かってくれない人。 近くにある自分の鞄を早々に取って、教室を出て行こうとした。 「帰るの?」 「……」 「泣くの…?」 「……っ元はといえば」 「うん?」 …違う。佐藤くんがチョッカイ出して来たからとか、そんなの違う。 不器用なワタシが器用に恋愛出来てた保証なんて無い。 自分ばかりが不安がってると思ってたけど、島田くんもそうだった。 ワタシが下手だった。 「恋愛、難しい?」 ……佐藤くん。 「…佐藤くんって」 「……」 やっぱり。 「優しくないね」
/580ページ

最初のコメントを投稿しよう!