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「どこ行くの」
「……」
佐藤くんが別のクラスで、島田くんが同じなら良かったのに。
「島田くんの教室…」
「…ふーん」
何度も思った。
何も用が無いのなら、声なんて掛けてこなければいいのに…。
「菜々っ」
いつものように、4時間目の終わりのチャイムと同時に教室を出たワタシは、慌てた様子で走ってきた加奈に呼び止められる。
「加奈…?」
「どこ行くのっ?」
“どこ行くの”
…これ、佐藤くんにも聞かれた。
ワタシが島田くんの所に行くことを、加奈は知ってる筈なのに。
「島田くんのとこだよ…」
「ふ、ふーん」
デジャブ?
「佐藤くんと全く同じこと聞くんだね」
「え、私?」
コクリと頷けば、何かを悩み出してしまう加奈。
「今…は、行かないほうがいいかも」
…でも、昼食の約束してるし。
それから、親友の言葉を無視して島田くんの教室へ向かうと、よく顔を見掛ける女子が廊下に立っていた。
そして、窓を挟んで会話をしている、見慣れた彼の姿を見つける。
…また元カノと話してる。
ボソ
「引き返そ…」
キュッ、と廊下が鳴って少し心臓が落ち着かなくなった。
話をしている2人に気付かれたくなくて、歩くスピードも少しだけあがる。
どうしてワタシが逃げなくちゃいけないんだろ。
こうやってもう何度も、島田くんの教室に行けない日があった。
佐藤くんの意地悪な言葉を無視して、親友の言葉まで無視して。
彼の、別れたはずの元カノとの関係さえも疑わず、無視してきた。
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