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そんな、そんなある日…―。
「ごめんっ」
それはある放課後の、ワタシの教室でのこと。
「珍しいね…こっちの教室に来るなんて」
というより…初めて?
「小野寺…」
まだ教室に、鞄の中を整理したり、部活のユニフォームに着替えているクラスメイトもいる中で。
島田くんは申し訳なさそうな顔をして、ワタシを見下ろしてる。
…心臓がうるさい。
「ごめん小野寺。俺…やっぱり」
“やっぱり”…なんだろ。
「島田さー。もっとハッキリ言わないと分かんないよ」
聞き慣れた声が背後から聞こえた。
佐藤くんだ。
佐藤くんは本当に…ヒドイね。
「分かってるよ」
そう言って、島田くんは体の横で拳を作った。
そーだよ、分かってる。
「…その、さ」
「うん」
いつもは来ない教室に来た島田くん。
“やっぱり”の先も、なんでワタシの心臓がうるさいのかも、どうして彼の後ろに隠れるようにして元カノがいるのか、とかも。
全部分かってるんだよ。
…佐藤くんは優しくない。
意地悪だ。
「ブサ小も空気呼ん、」
「うるさいな」
ポタ…タ
教室がシン…として、すぐにヒソヒソ声が響く。
この涙は、いつもみたいに吐かれる佐藤くんの意地悪な言葉に、我慢という感情の糸が切れたからなのか。
それとも…―。
ポタ
グチャグチャで1つにまとまらない感情が、ワタシの顔を歪めさせた。
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