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  「今日のオカズ何?」 「…冷食」 「ハハッ、またぁ?」 「親も朝早いから…仕方ないよ」 「よっしゃ、俺の焼きそばパンを分けてやろうっ」 「クス。またー?ずっとソレだよ」 昼休み。 屋上で、他愛のないコトで笑った。 好きな人の言葉1つに、焼きそばパンでさえキラキラして見えていた。 キスも、まだ。 手を繋ぐことだって、まだ。 少女漫画のように、とんとん拍子には進まないもんだ。 それでも毎日が来ること、とても嬉しかった。 輝いてたと思う。 「佐藤くんと仲いいの…?」 「まぁ人並みに。同中だしね。なに?あいつまだ何か言ってくるの?」 「…大丈夫。精神的にまいることはされてない。小さな意地悪」 「俺からまた言っておくよ」 「…ううん、いい。大丈夫」 佐藤くんのことも熱心に相談にのってくれて、心配される度に嬉しくなった。 心配してくれると、好きが伝わってくるみたいで心地良い。 だけど…―。 「菜々、あっちへ行こう」 「え…でもトイレに、って加奈が言ったのに」 「いーからいーから」 加奈が好き。 でも時々この気を遣ってくれることで、気付かされる問題があった。 「加奈…」 「あー…バレバレ、か」 島田くんが元カノと笑って話をしてる。 割って入る勇気は持ち合わせてないもので、逃げるように廊下の窓際を歩くことが増えていった。 いくらワタシが今、島田くんの彼女であったとしても。 “元カノ”に勝る理由も自信も…無い。
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