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帰り際に、店主が言った。
「一三さん、どうして僕があの実の話をしたのか、不思議じゃないですか?
いつだったか、一三さんが一度だけ、幼なじみの方と、いらっしゃったでしょう?その時の一三さんを見ていて…なんとなく感じたんです。あの実が、必要な人だなって」
ニッコリ笑う店主に、一三は、さらに驚く。だが、一三も微笑むとペコリと頭を下げた。
「ありがとう」
「いえいえ。お役に立てたのでしたら、嬉しい限りです。また、いらしてくださいね。お待ちしております」
本屋を出ると、一三は、家に帰る。
すると、家の前で五郎が、木で何かを作っていた。
「何してるの?五郎」
「おっ、帰ってきたな。イスを作ってるんだ。外で座る用のを」
「そっか。そうだ、五郎!今度、お弁当作って、どこかで食べようか」
五郎は手を止め、一三を見た。
「ああ、そうだな」
穏やかな表情の五郎。だが、彼は違う事も考えていた。
それは、一三の愛し方だ。 一三が怒ってから、実はキスやハグ以上の事はしていない。
若くなった五郎は、欲求不満に陥っていた。
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