それなりのこと 1

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「えらい入れ込んでるのね」 「そうだね」 「ハハ。 さらっとのろけてるし。 彼女さん、顔赤いわよ」 楠原の顔を見ると、ほんのり赤みがさしていた。 俺のシャツを握る手の力が少し強くなった気がする。 「何さん?」 「楠原だよ」 「孝文に聞いてないわよ。 本人に聞いてるの」 「……あ。 楠原、……果歩です」 楠原は俯いていた顔を上げて、怯えながらもちゃんと立宮を見てそう答えた。 「果歩ちゃん、ね」 ふーん、という顔で笑う立宮。 同い年なのに、何故か楠原の方が何歳も下に見える。 立宮は、 「よろしく、果歩ちゃん」 と、楠原に右手を差し出した。
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