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「……」
彼は目の前の集団を煙たそうにしている。
そんな事など、お構いなしの女子集団は全く動こうとしない。
最初から
そのくだりを自分の席から見ていた男子生徒が彼女らに呼びかけると
行く手を阻む女子は退き
美亜だけとなった。
男は軽く頭を下げ
何事もなかったかのように通過する。
女子の騒ぎ声が無くなり
一気に静かになった室内の入口で
美亜は1人、ポカンと口を開けていた。
黙った彼女の視線の先は
先程
「邪魔になってンぜ」
と声を上げた男―――
―――戸田 玲雄(レオ)だった。
「……何?自分の話、途中で潰されて面白くないの?」
彼はうっすりと笑みを浮かべていて
周りの男子もケラケラしている。
美亜の顔は一瞬のうちに熱くなり
遂には、その場からどこかへ向かって走り出した。
高校3年、2月。
今までで、こんな屈辱的な出来事に遭遇したのは初めてだった。
彼女が全速力で廊下を通過していくのを
すれ違う人間全てが
何事だ、と言わんばかりに振り返る。
しかし、今はそんな事など見向きもしない。
ただ
ひたすら1カ所の目的地を目指して
走るのみ――――。
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