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初めに言っておく。
ここ、黒糖高校は伝統のある男子校だと言うことを。
初めに言っておく。
ここ、黒糖高校はホモやらバイやらは、一寸たりともいないと言うことを。
ましてや大きなクリクリ瞳を持ち歩いてる奴なぞ、ここにきて一回もみかけなかった。
逆にだ、細めた瞳で眉を寄せられたことは五万とある。
俺らのもっぱらの会話は、女欲しいから始まり、キスしてぇ、セックスしてぇ、AVみてぇ、喧嘩してぇ、煙草吸いてぇ、勉強だりぃ、眠ぃ、呑みしてぇ、先公うぜぇ……。
と、まあこんなもんだ。
だから、生徒会なんて地味な奴らがやるのも当たり前で。
去年の文化祭は、会長が某国民的アイドルのオタク踊りを披露したからには、俺たちは腹を抱えた。
「洸!」
廊下からくすんだ黒髪がひょこっと覗く。
肩に下げたエナメルから銀色の携帯を覗かせた。
「お前昨日俺ン家に忘れただろ。ありえねえー」
「あ、まぢー?ありがときょん助。愛してる★」
「きめぇ死ね。殺すぞタコ」
片目をつぶって首をかしげたコウに、きょん助は心底嫌な顔をする。
ノリの悪ぃーの、と唇を尖らせた洸は、一度金に染め上げた髪先をいじった。
今ではすっかり赤茶毛である。
フゥと一つ息を吐いて、きょん助を見やった。
端正な横顔、よく焼けた肌、短い髪の毛。
身長は180とみた。
なんだ俺と8センチ差か。まだ、大丈夫。
「あー!!牛乳かぶりてぇー!!」
「牛になるのかお前」
「残念。乳はだせません」
エヘ、と肩をあげる洸に、きょん助は再度嫌な顔をした。
アゲ17。俺たちはいつも、ただただ面白い事だけを探している。
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